東博の常設展・松本楓湖《牛若》

先日のトーハク×びじゅチューン!コラボ展覧会を観たついでに、今回も常設展をちらっと観てきました。
日頃なかなか日本画を観る機会がないので、いつも新鮮な気持ちで観ています。
今回いいなと思ったのは松本楓湖《牛若》です。

松本楓湖《牛若》


松本楓湖《牛若》19世紀(会場内にて撮影)

特徴的な橋の影は擬宝珠です。
この擬宝珠と題名から、題材が「五条大橋での牛若丸と弁慶の対決」であることが分かります。

しかし、そもそも「五条大橋での牛若丸と弁慶の対決」は通説なだけみたいですね。

まず、平安時代当時の五条通は今の場所ではなく松原通に相当するため、本来の場所は現在の「松原橋」であるという説があるようです。
ちょっと調べてみたのですが、現在の松原橋にも擬宝珠があるようです。
なので楓湖がどちらを採用したかは画面だけでは分からないですね。
また『義経記』では対決場所が清水観音になっています。

✳︎✳︎✳︎

空高くひらりと舞う牛若丸のみが描かれ、対決の相手である弁慶の姿は見えません。
擬宝珠と牛若丸の間を繋ぐのは雲に隠れた満月でしょうか。
擬宝珠・満月・牛若丸が高い位置で一直線に繋がる構図も美しいですね。
橋よりも、満月よりも高く舞う牛若丸の姿だけが描かれていることで、牛若丸のすっきりとした若さやしなやかさなどが引き立っているように思います。
躍動する場面の一瞬を切り取ったような、印象的な作品です。