超私的・2018年の展覧会ベスト5

何か意識的にアウトプットをしなければという想いに駆られたことを機に、今年は学生の頃よりも遥かに真面目に展覧会に行き、ブログという形でアウトプットをしてきました。

年始に思いつきで始めたことですが、そのことがその後、適応障害になり、休職と退職、そして転職という人生の転機をサバイブするための糧となり、結果的に自分を自分で奮い立たせることができたと思っています。

そういうわけで、今年は27の展覧会に足を運ぶことができました。
今回はその中でも特に印象深かったものを5つ選びました。
ところで選ぶために自分の感想を読み返していたら天文学と印刷展を書きそびれていたという酷い失態に気づきました…これもめちゃめちゃいい展覧会なのでまた折を見て書きます!

5位 桑久保徹展「A Calendar for Painters Without Time Sense 1. 3. 4. 5. 7. 8」

体調が悪くひたすらベッドで意味なくスマホを眺めることしかできなかった時期の私を「あ、この作品は絶対に自分の眼で観たい」と引き上げてくれた、思い入れのある展覧会です。
ギャラリーデビューを果たしたという意味でも印象深いですね。

4位 ルーヴル美術館展 肖像芸術—人は人をどう表現してきたか@国立新美術館

とにかくキュレーションが良かったです。
肖像画や彫刻に対する苦手意識が吹っ飛びました。
ここから私自身の関心と行動がミケランジェロ展、そしてウィリアム・モリス展へと繋がっていったこともあり、何か特定の作品がというよりもキュレーションがすごく好みだった展覧会でした。
自分の幅をがつんと広げてくれたという点でランクインです。

3位 モネ それからの100年@横浜美術館

思い返したときにああ良かったなというタイプの展覧会です。
モネを起点にするという試みに真剣に取り組まれていたのだろうな…と敬意を表したくなる展覧会だったのだとしみじみ思います。
皆が知っているモネ、皆が観たいモネ(睡蓮)を見せながらさらに別のところに連れて行くという手腕が見事でした。
美術作品を語る上での語彙力、感じた結びつきを確かに他者にわかってもらうための努力、私も見習いたいものです。
福田美蘭を知ることができたのも良かったです。
ニコ生で聞いた「作品作るよ!→さらに思いついたからもうひとつ作ったよ!」というエピソードは、クリエイターってすっごい…と思いました。

2位 フィリップス・コレクション展@三菱一号館美術館

個人のコレクション系展覧会の中ではこちらが1番コレクターの想いを丁寧に掬い取っていたと思います。
絵画に対するダンカン・フィリップスの言葉が非常に印象深く、またすとんと自分の中に落ちてきたので、再度引用します。

絵画は、私たちが日常生活に戻ったり他の芸術作品に触れたりしたときに、周囲のあらゆるものに美を見出すことができるような力を与えてくれる。このようにして知覚を敏感にするよう鍛えることは決して無駄ではない。私はこの生涯を通じて、人々がものを美しく見ることができるようになるために、画家たちの言葉を人々に通訳し、私なりにできる奉仕を少しずつしてきたのだ。

モンティセリの作品を初めて自分の眼で見ることができたのも嬉しかったですね。
全員巨匠!のキャッチコピーがなければもっと好きでした…

1位 ピエール・ボナール展@国立新美術館

ピエール・ボナールが最後の最後にどーんと私の心を奪っていきました。
時期補正なしに、今年1番心に刺さる展覧会でした。
作品の持つ色彩と生命力にやられてしまいましたね。
こちらはキュレーションもさることながら、作品そのものの強さで1位です。
熱量の高さは昨日のエントリ通りですが、実はこれでも内容を半分削っています。
本当は風景画のこととか、静物画もいいなとかそういうことも書きたかったのですがあまりにも長すぎたので止めました。
ちなみに5位で挙げた桑久保徹さん、次作はピエール・ボナールの予定らしいのでそちらも非常に楽しみにしています。
画家が対面した、ある画家のテーブルの記憶。桑久保徹評「ピエール・ボナール展」|MAGAZINE | 美術手帖

次点その①ミラクエッシャー展@上野の森美術館

こちらは自分の好みを自覚したという意味で思い出深い展覧会です。
エッシャー自然主義的な風景画はかなり好きでしたし、同じ魚でもグラフィカルに書いていたりやけにリアルだったりする描き方の違いが見えて面白かったですね。
やはり同じ画家の作品をまとまった状態で観ると、何かこう、その人のフィロソフィーが見えてくる気がしていいなと思います。
私はそういうのが好きで展覧会に足を運ぶのだな、と思った展覧会でした。
あとはすごく並んだという意味でも大変思い出深いです。

次点その②名作誕生ーつながる日本美術@東博

日本美術に詳しい友人に連れられて日本美術の見方を教わってきた展覧会です。
噛み砕いていろいろ教えてくれたので、案外日本美術もとっつきやすいものだとハードルを下げてもらいました。
若冲雪舟の何がすごいのか、というところや、仏像を観るときの目の付け所などを教えてもらったので、今年はその後も何度か東博に行きました。
多分学生時代より真面目に行ってるんじゃないかな…
ただまあ行く度にもう少し日本史の勉強もしたいなあと思っては思っておしまい、という感じなので、来年はもう少しちゃんと美術検定の勉強がてら日本史もおさらいしたいです。

今年はこの他にも美術に関わる映画を3本観たり、原田マハさんのトークショーに行ったりと、かなり自分比で充実した時間と学びができたのかなと思います。
今年の頭はどうなることかと思いましたし、いまも服薬しながらの仕事と家庭の両立にあっぷあっぷしていますが、この記録そのものが私の2018年を肯定してくれているような気がします。

年始はムンク展からスタートの予定です。
ゴッホ展もクリムト展など、楽しみな展覧会がいっぱいなので、いまからわくわくしています。
来年も自分の心のために、たくさん展覧会に行って感想を書きたいと思いますので、またお付き合いいただければ幸いです。

それでは、今年1年ありがとうございました!